Dr.Kのあゆみ

Dr.Kのあゆみ Vol.5(初めての手術)

前十字靭帯断裂

Dr.Kのあゆみ Vol.5(初めての手術)

今回のブログはこれまでの「Dr.Kのあゆみ Vol.1〜4」の続きになります。
(「Dr.Kのあゆみ Vol.1」はこちら)
前回の(「Dr.Kのあゆみ Vol.4」はこちら)

前十字靭帯断裂


前回は、大学一年生になって比較的すぐに亡くなった祖父のお話を書きました。祖父は、まるで私の合格発表を聞いて、きちんと入学したのを見届けるまで、待っていたようでした。


私の方は、相変わらず「想定外の」部活の毎日が続いていました。ある日、アタックの練習をしていた時です。私の番になり、トスが上がりました。私は空中で体勢を崩したものの、何とかアタックを打ち、着地しようとしました。が、上半身と下半身が自分でもびっくりするくらい離れている感覚で、そのまま接地しようとした時に体中に「グキッ」という音が響きました。そのまま転倒し、一体何がどうなったのかわからない状態になりましたが、すぐに左膝が痛み始め、みるみるうちに腫れてきました。


すぐにみんなが集まってくれ、ある先輩が「ちょうどバレーボール部のOBの先生が整形外科の当直をしているから。」と練習場所からすぐの大学病院の整形外科に連れて行ってくれました。
診てくださった先生に、「腫れてるね。今すぐには処置はできないから、今日は冷やして湿布をしておくね。明日整形外科の外来を受診するように。」と言われました。翌日、整形外科を受診すると、今度は昨日の先生ではなく、膝を専門にしている先生が担当してくれました。「膝に溜まっている水を抜くよ。もし水を抜いて、血液が混じっていたら靭帯が断裂していると思う。断裂していたら少し大ごとだよ。」と言いながら、普段の2〜3倍になった私の膝の中に注射針を進めていきました。すると血液の混じった赤い水が吸い出されました。先生も私も、想定しうる最悪の結果に、「あちゃー」という雰囲気になりました。MRIも撮り、「左前十字靭帯断裂」と診断されました。受傷直後は、炎症が強くて手術をすることはできないため、炎症がおさまるまで待ち、タイミングをみて手術をするという方針となりました。少しの間、安静にしていた方が良いとのことで、ある程度膝を固定してもらい、松葉杖を借りました。(もう今から20年近く前の話になるため、治療の詳しいことは忘れつつありますが。)
時がたつに連れて、ある程度日常生活には支障がないくらい、膝は落ち着いてきました。

前十字靭帯の偉大さを知る


前十字靭帯というのは、膝の関節の中にある靭帯の一つで、簡単に表現すると膝の上にある骨(大腿骨)と下にある骨(脛骨)を繋いでいて、脛骨が前に滑り出ないように制御したり、膝をひねった時にひねり過ぎないように制御する役割があります。まるで、大腿骨と脛骨を繋ぎ止めて、脛骨が飛び出さないようにするストッパーです。私は、このストッパー機能の前十字靭帯(左)を失ってしまいました。炎症が落ち着いてくると、普段はまるで怪我などしていないかのように動くことができます。部活も毎日参加し、ボール拾いをやっていました。


ストッパー機能を失うと、自然に「ストッパーなしで動かすことのできる動きの範囲」を自分の感覚で把握し始め、次第に前十字靭帯の役割を脳でカバーするようになっていました。一つの機能を失って、その代わりを担う新たな機能を得るという「代償作用」をすぐに見つけるところが、人間の凄さだなぁと感じました。しかしながら、脳は非常にコントロールが難しく、自分のメンタルが見事に反映されます。恐怖心でいっぱいの時は動きも小さくなり、大胆になっている時は思ったよりもしっかり走ることができます。私はよく調子に乗って「意外といけるかも」と、無理をして走っては、ストッパーが外れ膝がグギっとなり、「また腫れるのではないか?」と心配になりました。これは何度か繰り返したので、残念ながら、私の脳は痛み・恐怖心を「忘れる」という機能に長けていたようです。ちなみに、これまで知りませんでしたが、このように膝がガクッと外れるような現象を「膝崩れ(Giving Way)」と呼ぶようでです。


こうして、これまでの人生で着目することのなかった存在である「前十字靭帯」の偉大さを、私は失って初めて強く認識し、感謝するのでした。

人生初の手術


基本的に前十字靭帯は自然に良くなることはなく、先ほどの「膝崩れ」の度に半月板や軟骨の損傷が起き、若い人でも変形性膝関節症になる可能性が高まるとのことで、手術を受けることになりました。最初のブログで書きましたが、アレルギー性鼻炎のため鼻の粘膜をレーザーで焼く日帰り手術は受けたことがありましたが、本格的な手術を受けたことはありませんでした。怪我をしてから、約半年後、初めての手術「前十字靭帯再建術」を受けました。手術は、麻酔科の先生の判断で、全身麻酔ではなく、局所麻酔で行うことになりました。自分の大学の大学病院で手術を受けたので、私が学生だと知っていた麻酔科の先生が、「手術中眠りたい?起きてたい?」と尋ねてくれました。スポーツドクターを目指していた私は、将来自分が進みたい道の手術ということもあり、半ば興奮気味で、「起きていたいです」と答えました。手術室で、麻酔の後、下半身の感覚はなくなり、モニターの自分の心電図の音を聞きながら、手術が始まりました。トントン、カンカン、「そこを引っ張って」など、先生方はまるで工事をしているような感じでした。


なんと、この手術中に、「整形外科は自分の将来の道ではないかもしれない・・・。違う気がする・・・。」と感じ、進路を変更しようと思ったのでした。


今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。私はスポーツドクター(整形外科医)になりたくて医学部に入ったのに、一年生の秋、自分の手術中に整形外科を目指すのをやめたのでした。さて、次回は術後です。ご覧いただけたら嬉しいです。


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ABOUT ME
Dr.K
都内在住の30代女性。 内科医として、西洋医学・東洋医学を学び、現在都内で勤務医をしています。 自身が幼少期から気管支喘息、アレルギー体質であり、また大学時代の左前十字靭帯断裂後手術を受け、そして現在、変形性股関節症と向き合っています。 このブログでは、私自身が抱える健康問題に関して、西洋医学・東洋医学・代替療法・民間療法・スピリチュアル的なアプローチなど、興味が湧き、自分で納得したものを取り入れ、その結果をシェアしていきたいと思います。ゆくゆくはHolistic(ホリスティック)医学(=人間をまるごと全体的にみる医学)を提供できる医師を目指しています。