Dr.Kのあゆみ

Dr.Kのあゆみ Vol.10(研修医生活スタート)

初期研修医スタート

Dr.Kのあゆみ Vol.10(研修医生活スタート)

今回のブログはこれまでの「Dr.Kのあゆみ Vol.1~9」の続きになります。
「Dr.Kのあゆみ」シリーズVol.1はこちら
「Dr.Kのあゆみ Vol.9」はこちら

研修医生活スタート


国家試験の合格発表から、慌ただしい引っ越しを経て、いよいよ初期研修医生活がスタートしました。憧れの病院での初期研修は全国から集まった総勢30名の同期と共に始まります。
同期全員、病院と棟続きの寮に住み、1人1台院内PHSを持ち(持たされ?!)、病院にいる時はもとより、寮に帰宅しても担当患者さんのことで、24時間いつでも病院からPHSに電話がかかってくるシステムでした。外出した場合は、携帯電話にかかってきます。研修医時代は、シャワーを浴びる時でもユニットバスに必ずPHSを持って入り、いつでも電話を取れるようにしていました。シャワーを浴びていると、心なしかPHSの音が聞こえる気がして、一度シャワーを止めて、PHSが鳴っていないことを確認していました。
研修医生活最初の1週間は、オリエンテーションです。電子カルテの使い方、検査部、薬剤部、看護部など各部署からのオリエンテーションがあり、手技のやり方も教えてもらいます。そして、同期同士で痛い思いをしながら、点滴や注射の練習をします。また、研修医は約2ヶ月毎に、1〜3名ずつで診療科をローテートしていくのですが、その周り順を決めます。


このオリエンテーション期間は、研修医生活の中で唯一同期全員が当直もなく、担当患者さんもまだいないため、そろって夜自由に行動できる期間でした。お互いをよく知るために、食事会をしたり、また同期の中にジャズピアノが上手な男性がいたのですが、病院の外来ロビーにあるグランドピアノの使用許可を得て、同期みんなで夜遅くまでピアノを聞きながら語り合ったりしました。その光景を今でも覚えていて、「すごい環境に身を置くことができて、幸せだなぁ」と思ったことを思い出します。同期は、「よくこんな素敵なメンバーを選んだなぁ」と感動するくらい、みんな多才で優しいメンバーでした。仮に集団面接だったとしたら、前面に出て目立つタイプではなくても、よくよく話をしていくと、実はとても面白く、味があり、芯が通った人が多くて、私は密かに、マッチングの試験をした面接官の先生方の人を見る目に感心していました。
皆で食べたり飲んだりした後は、同じ寮ですので、帰っていく先も同じです。まさに「同じ釜の飯を食う」状態でした。


いよいよオリエンテーション期間が終わり、それぞれの診療科に分かれていきます。右も左もわからないまま、早速仕事が始まり、病棟に向かいます。点滴を入れたり、胃管を入れたり等の処置はまだまだ慣れていないので、とっても緊張します。これまでは、同期同士の、ある意味若くて元気なわかりやすい血管で練習していましたが、練習で刺していたような立派な血管は、実践ではなかなか巡りあえません。針を刺す前の、血管探しから苦戦を強いられます。患者さんにとっては、こちらの初心者マークは関係ありません。「初心者マークが見えないように、落ち着いて、慣れた様子で向かうように」とアドバイスをもらいましたが、なかなかそううまくはいきません。
研修医は、担当患者さんを診察し、検査結果をチェックして上司と方針を決定し、カルテを書き、その科毎に特徴のある処置や検査(内視鏡検査や画像検査)についたり、外科系であれば、手術に入ったり、手術後の傷の処置をしたりと動き回らなくてはならないので、点滴を入れるなどの処置で時間を取られているわけにはいかないのですが、最初は何をするにも時間がかかり、とっても歯がゆかったです。とにかく場数を踏んで経験していくしかありませんでした。経験途中の患者さんには本当に感謝しています。誰でも「初めて」という状況はあると思いますが、私の「初めて」に寛容でいてくださった患者さんを考えると、私も誰かの「初めて」に遭遇した時は、大きな気持ちで優しくいたいと思っています。

近くて遠い憧れの存在


研修医1年目にとって、近くて遠い憧れの存在は研修医2年目の先生方です。1年目の私たちに、手取り足取り教えてくれて、点滴に苦戦していると、颯爽と代わってくれたりと、とても優しく頼りがいのある先輩ばかりでした。1日も早く、テキパキと何でもできる先輩方のように、仕事ができるようになりたいなぁと思ったものでした。また、さらにその上には後期研修医の先生方が輝きを放っていました。研修医になって最初にローテートした診療科の後期研修医の先生に「働く中で、常にコメディカルのことを考えてあげないとダメだよ。オーダーを出したり、お願いしたりする時も、緊急の時以外は相手にとって働きやすい時間を考えてあげることは重要だよ。そして、丁寧に接することが大事。偉そうな態度をとるなどは論外だよね。」と教えてもらいました。研修の最初に教わった「働く上での姿勢」は、今でも変わらず大切にしています。
ちなみに、コメディカルとはWikipediaの説明では、「医師や歯科医師の指示の下に業務を行う医療従事者を指す」とあり、看護師や薬剤師、臨床検査技師、理学・作業療法士などなど、一緒に医療チームを組むスタッフのことです。コメディカルという単語は和製英語で、海外ではparamedic、paramedical staffと呼ぶようです。


また、2つ目に回った外科ではこんなことがありました。手術の種類によって、翌日の朝から食事を開始する場合、翌朝までストップする場合、翌日ストップして経過を見ながら徐々にゆっくり食事を上げていく場合、など食事のオーダー1つとってもバラエティに富んでいました。ある日、後期研修医の先輩と二人で手術後の回診をしていたときのことです。前日に手術を終えた患者さんで、その方は本来、翌朝から食事が開始できたのですが、私が朝まで食事をストップしてしまっていました。回診中、患者さんが「朝の食事から出てきますか?」と先輩に尋ね、先輩は「そうです。」と答えました。私は食事をストップしていたことを思い出し、その患者さんの部屋を出たところで、先輩に「すみません、朝まで禁食にしていました。今から、朝食を追加してもらいます。」と報告しました。すると、先輩はくるっと患者さんの元に戻り、「すみません、確認したところ、今日の食事はお昼からになります。点滴をしているから、大丈夫。お昼ご飯まで待っててくださいね。」と言いました。その患者さんには朝食抜きにしてしまい、本当に申し訳なかったのですが、先輩は一言も怒ったりしません。後で、その理由を聞いたところ、『「怒る」と「しかる」は違うからね。感情的に「怒る」ことはないし、そして仕組みを理解していなかった場合はただ訂正すれば良いだけ。手術後に食べたら危険な場合に食事を出してしまっていたら「しかる」けど、今回は慎重にしすぎたくらいで安全面は問題ないから問題はないよ。次回、この手術後の患者さんには食事を出して良いよ、ただそれだけ。』と話してくれました。そして、私も後輩ができたらこういう先輩になりたいと強く思いました。

初めての当直


ゴールデンウィーク明けからいよいよ、当直が始まります。私がいた病院では、毎日、研修医1年目が2人ずつ病棟当直、研修医2年目が2人ずつ救急外来当直をします。当時、点滴を入れるのは、看護師ではなく、全て医師の仕事でした。(今は看護師が入れることが多くなっています。)1年目の病棟当直は、全入院患者さんの夜間に抜けたり漏れたりしてしまった点滴を入れ替えることや、救急外来から緊急入院があった場合に、入院後の指示を出すことや、救命救急センターに救急車が搬送された時の初療を手伝うことなどがありました。研修医2年目は、救急外来に受診する患者さんや救急車を次から次に診察し、上司の内科当直の先生に報告して、治療します。研修医1年目の当直では、まさに「背水の陣」で、日中は点滴などで苦戦しても周囲に助けてくれる同期や先輩方がいるのですが、当直の時間は同期2人でなんとか一晩乗り切るしかありません。それも夜間に点滴が漏れる患者さんは、ほとんど血管が細くてなかなか入りづらい方が多く、消灯した病室に、どんな人かもわからないまま、懐中電灯片手に入っていき、点滴を入れていました。当直が始まる前は「一晩何事もなく、無事に朝を迎えることができますように。」と願っていましたが、この当直前に願うルーティンは、その後研修医を卒業して、内科当直をしている間もずっと続けてしまいました。当直は何度やっても、始まる前は緊張します。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ようやく研修医生活が始まりました。次回も引き続き研修医時代のお話になります。ご覧いただけたら嬉しいです。


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ABOUT ME
Dr.K
都内在住の30代女性。 内科医として、西洋医学・東洋医学を学び、現在都内で勤務医をしています。 自身が幼少期から気管支喘息、アレルギー体質であり、また大学時代の左前十字靭帯断裂後手術を受け、そして現在、変形性股関節症と向き合っています。 このブログでは、私自身が抱える健康問題に関して、西洋医学・東洋医学・代替療法・民間療法・スピリチュアル的なアプローチなど、興味が湧き、自分で納得したものを取り入れ、その結果をシェアしていきたいと思います。ゆくゆくはHolistic(ホリスティック)医学(=人間をまるごと全体的にみる医学)を提供できる医師を目指しています。