変形性股関節のこと Vol.1(痛みの始まり)
「変形性股関節症のこと」というタイトルで、ブログを書いていこうと思います。通常の医学的なブログとは違い、変形性股関節症のことを医学的に説明していくというよりは、私自身の経験を書いていく予定です。
注意!! 今回のブログは、終わりの方に実際の私の股関節のレントゲン画像が出てきます。苦手な方は避けてください。
「2018年1月24日」
人生で忘れられない日となった2018年1月24日。この日は、飛行機を利用して日帰り旅行に出かけました。飛行機を降り、長距離バスを使って目的地に到着し、昼食を食べました。昼食を食べて、立ち上がった時、左の股関節に激痛が走りました。このタイミングで突然痛みが出てきたので、私は一時的な痛みだと思いました。なんとなく股関節のはまりが悪いような感じがあり、飛行機、バスと移動時間が長かったので、てっきり「首の寝違え」の股関節版のような感じだと思っていました。
それは、左股関節の付け根の奥、手が届かないあたりを探って直接マッサージしたいような、そんな感じでした。
道中ずっと痛みながらも、「原因はなんだろう?」と特に思い当たる節がなく、時々股関節をマッサージしながら、旅行を続け、帰宅しました。その日は「明日には良くなっているだろう」と思いながら眠りにつきました。
「左股関節の痛み」について
「2018年1月24日」の痛みが出現した翌日、目覚めた私は前日の左股関節の痛みはすっかり忘れていました。しかし、ベッドから立ち上がった時、再度痛みが出てきました。「あら、痛みが残っているみたい。なんでだろう?」とこの日も、近々改善するだろうと、あまり気にしていませんでした。
1週間以上経っても、なかなか改善しないどころか、少しずつ痛みは増悪傾向にありました。一時的なもので、おそらく徐々に改善していくだろうと予想していたので、少しずつ悪化するということが腑に落ちませんでした。
2月に入ると、私のお尻から足先までとても冷えていることに気がつきました。これまで、冷え性とは無縁だと思って生きてきたので、冷えた足を触った時には、ぞっとしました。「いつの間にこんなことに」というのが正直な感想でした。
左股関節の痛みは、相変わらずで、動かすと痛いのに、動かしたいような不思議な感じがあり、この痛みに対して安静にした方が良いのか、動かした方が良いのかわかりませんでした。ある程度の安静期間を経ても、一向に良くならないので、今度は作戦を変えて自宅周辺を走ってみたりしました。
お風呂に入って足を温めたり、湿布を貼ってみたりしましたが、痛みは少しずつ強くなっていきます。
3月頃には左下肢が脱力したような自分の意思では足が持ち上げられないような日も出てきました。
この頃は無職の期間でした。
(無職になったきっかけは、「Dr.Kのあゆみ Vol.26」こちら)
この無職期間中は痛みがありましたが、旅行したり、3月には研修医時代に出演していた院内ミュージカルに再び出演しました。ダンスもありましたが、ダンスの時だけでなく、歩くだけでも痛みがあります。
そして、左足をあげることができなくなってきて、左足からお風呂に入るのが困難になっていきました。靴下も左足をあげられないので、立ったまま履くのが難しく、座って履くしかできなくなってきました。股関節を曲げると痛みが強いので、左足の爪がきれなくなってきました。
この時は、寝ている時も痛みはたまにある程度で、時に腰痛が出るときもありました。湿布を貼ると、ある程度効く感じがしました。
発症日がわかるような痛みだったので、いつか良くなるかもしれないと期待しながら、比較的我慢強かったのもあり、最初に痛くなってから半年近く放置してしまいました。4月から東洋医学研究所での新生活も始まり、漢方の勉強があまりにも特殊で、これまで学んできた医学と考え方が大きく違ったので、正直勉強が大変で、自分の股関節は後回しにしてしまっていた感じがありました。
痛いながらも、何とかすごした夏を越え、季節は秋になりました。少しずつ冷えるようになってきたこともあるのか、10月頃からは左下肢がしびれる頻度が増え、股関節痛もひどくなってきました。
以前は、階段の下りだけ痛かったのが、上りも痛くなってきました。一歩一歩で股関節に激痛が走るので、階段が怖くなりましたが、東京の駅は階段が多く、毎日何とか上り下りしていました。そして、早くは歩けないのに、ゆっくり歩くと、股関節も腰も痛くなりました。
何よりも私を苦しめたのは、寝ている時の痛みでした。歩いたり、階段での痛みは納得できるのですが、寝ている時、私の股関節は完全に安定した置き場を失って宙づりになったようなイメージで、仰向けでもうつ伏せでも寝返りをうっても何しても痛いのです。もともと不眠ではなく良く眠れるので、寝つきは良いのですが、一晩中痛みを自覚しながらも無意識のうちに痛くない場所を探したり、ストレッチをしながら、眠るようになりました。しかし、幸せなことに、「こういうものだ」として、あまり悲観することはなく、日中も眠気に襲われることなく、仕事ができていました。
先にMRIを撮ってしまう
私が医師ゆえに通常の流れを踏まなかったので、少し反省もあるのですが、あまりにも痛みと痺れが強くなってきたため、さすがに怖くなってきたため、同僚に紹介状を作成してもらい、11月17日に放射線科専門のクリニックへ左股関節のMRIを撮りに行きました。(1月24日の痛みから約10ヶ月経っていました。)
そのクリニックでは、MRI検査を受けた後、放射線科の先生がMRIを読影し、患者さんに説明するというところまでやってくださるクリニックでした。(患者さんへの説明は、検査依頼医にゆだね、放射線科のクリニックで行わないことも多いです。)
MRIを撮影し終わって、待合室で自分の名前が呼ばれるのを待ちました。「嫌な予感がする」ような、「MRIではなんともありません」と言われるようなで、自分でもどっちなのかわからず、ドキドキしながら待ちました。「Kさんどうぞ」と言われ、診察室に入ると、担当の先生から「左股関節、痛いでしょう。良くないですね。大腿骨頭にも変化が出てきています。整形外科に行かれた方が良いですよ。診断結果は後ほど、お渡しします。」と言われました。お会計を待っている間、「良くないってどういうことだろう?大腿骨頭壊死かなぁ。」と、「何ともない」と言われる確率の方が高いと思っていたので、思ったよりもダメージを受けながら待ちました。
お会計が済んで、クリニックの外に出たら、すぐに封筒を破り、診断結果の紙を取り出しました。そこには、
“左臼蓋の嚢胞性変化、左大腿骨頭壊死の疑い”
と書いてありました。
大腿骨頭壊死・・・、大腿骨頭壊死・・・、原因として思い当たる節もなかったので、頭が真っ白になりました。
母に電話して、結果を伝え、最初は淡々と伝えたのですが、徐々に涙が溢れ出てきて、帰りの駅までの道のりで泣いてしまいました。
その夜、あまり自ら干渉してくることのない父が、初めて(だと思います。)心配して電話してくれました。
整形外科受診、診断がつく
11月22日大学病院の整形外科を受診しました。「最初にMRIを撮るよりも、まずはX線を撮ってからでないと、診断はつけられないですよ。」と先にMRIを撮ってしまったことをチクリと言われましたが、もっともなので何も言えず、実際に診察する前にまずX線を撮影してもらいました。
X線検査が終わり、再び診察室へ呼ばれ、いくつかの問診と、診察を受けました。問診では、「靴下は履けますか?、足の爪は切ることができますか?」などを聞かれました。まさにピンポイントで自分ができないことを指摘されたので、皆同じことで苦しんでいるんだなぁと思いました。
撮影した股関節のX線検査、実際の私のものを載せます。
赤丸が左股関節で、赤矢印の骨盤の骨が骨化してる(白い部分が濃くなっている)のがわかります。また、同じく赤矢印のところの骨盤は本来もっと大腿骨頭全体を覆ってるのが正常で、私の骨盤はかぶりが浅くなっています(=臼蓋形成不全)。青矢印は股関節の関節の隙間(軟骨)がとても狭くなっているのがわかります。
診断の結果、先天性(=生まれつき)の両側臼蓋形成不全による左変形性股関節症と診断されました。そして、変形性股関節症の中でも進行期〜末期の診断で、そのまますぐに手術の説明を受けました。
すぐに手術などと思ってもみなかったので、少しびっくりしました。手術の方法もいくつかある中で、「今は技術も材質も進化してきているので、人工股関節置換術の方が良いと思います。ご年齢的に、寿命を全うするまでに、もう一回くらい再手術をしなければならないかもしれませんが、今は傷も小さく、解剖学的に大きく動かさない人工股関節置換術の方が、再手術もやりやすいですよ。」と説明してくださいました。説明はとてもわかりやすく納得できました。
手術法については納得したものの、私としては手術受けることなど考えずに受診していたので、「すぐに受けた方が良さそうな手術」と「亡くなるまでにもう一度受けなければならなさそうな手術」2つの説明を受け、頭が追いつかずにいました。
「質問はありますか?」と聞かれた私が聞けた精一杯のことは、「手術は今すぐに必要ですか?そして、手術の絶対適応は何ですか?」ということでした。先生は「手術は緊急性のものではありません。手術の適応は痛み止めでも痛みが我慢できなくなることです。」と言われました。この時私は、眠っている時も含めて、何をしていても痛みがあったので、手術が近いんだろうなぁと思っていました。しかし、同時に「手術をできるだけ、遅らせるよう、今の自分の股関節に可能なところまで頑張ってもらおう」と思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
「股関節について」Vol.2に続きます。
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