「医学・健康について思うこと」 Vol.11(7月8月の健康(梅雨、猛暑)について振り返る)
7、8月を終えて健康面を考える
今日から9月に入りました。まだまだ暑い日が続いていますが、元気にお過ごしでしょうか。
今年は梅雨が長く、その間比較的気温は落ち着いており、むしろ寒いと感じる日さえあったように思います。
7月末まで梅雨が続き、8月からは一転して猛暑となりました。
外来で患者さんをみていて、今年は特にこの激しい気温差についていけずに、体調不良となった方が多かった印象があります。
今回のブログでは、7月8月の健康面を外来で比較的多かった声から、振り返ってみようと思います。
東洋医学から見た梅雨時に多くみられる症状

梅雨時には東洋医学で表現すると「水毒(水滞)(すいどく・すいたいと読みます)」で体調不良となる方がいます。
「水毒(水滞)」というのは、「毒」とついてしまうので、とても悪いイメージをもつかもしれませんが、決してそうではありません。
漢方で体質を捉える方法の1つに「気・血・水」という概念があります。
体には内臓もあり、骨・筋肉・皮膚などの構成要素がありますが、この「気・血・水」の概念では、体を「気・血・水」の3つの構成要素で捉えます。

「水毒(水滞)」と表現するときは、体の中では「水(すい)」が
「①過不足がある」
「②巡りが悪い」
「③分布が悪い」
のいずれか(重なることもあります)の状態になっています。
具体例をあげると、
✔︎脱水
✔︎浮腫
✔︎めまい
✔︎頭痛
✔︎車酔いしやすい
✔︎下痢
などが挙げられます。
(これらの例は純粋に「水」のみの異常という訳ではなく、実際は東洋医学での他の概念の異常なども複合して捉えて、治療していくことになります。)
体質的に「水毒(水滞)」傾向の方にとって、梅雨の季節はとても大変です。
湿気が多いと、「水の巡らす」働きがより低下し、頭痛やめまい、体が重い・だるいといった症状が出てくることが多くなります。
上の図のように「気・血・水」は互いに影響を及ぼすので、気・血を整えることも対策になりますが(気・血のお話はまた今後書こうと思います。)、対策してもなお続くような時には、水の巡りを良くする漢方薬を使用します。
「水毒(水滞)」に対する漢方薬も様々あるのですが、代表格の漢方薬は「五苓散」です。
名前の通り、5つの生薬が入っているのですが、桂枝(シナモン)という生薬以外は、全て水生植物が生薬として使われている面白い漢方です。
大昔の人は、水辺に生えて、水中でも根が腐ったりすることなく元気に花を咲かせている様子を見て、水の巡りの薬として使おうと思ったのでしょうか。
とても素晴らしい感性だなぁといつも感動します。
大昔と書きましたが、この「五苓散」というお薬はいつ頃からあるのかというと、紀元後200年からあります。
なんと1800年以上の歴史があるのです。
漢方薬の数は沢山あり、それぞれ「出典」と言われる書物に「初登場」したとされる本があります。
一言で漢方薬といっても、それぞれの薬で生まれた時代が異なります。
有名なところでは、「葛根湯」という薬がありますが、「葛根湯」も「五苓散」と同じ書物に載っており、1800年以上の歴史があります。
少し、脱線してしまいました。
今年は特に梅雨が長かったので、梅雨時の「水毒(水滞)」のお薬たちは大活躍しました。
「水毒(水滞)」の薬は、梅雨時だけではなく、台風の時にも役に立ちます。
梅雨時や台風など天気に左右されて頭痛やめまい、体が重くなるなどの症状が出るという方は、「水毒(水滞)」傾向である場合もありますから、東洋医学が役に立つかもしれません。
外来では、頭痛がある患者さんには、頭痛も原因によって治療法が異なるので、「頭痛ダイアリー」というものをつけていただきます。
「頭痛ダイアリー」には、天候や睡眠時間、疲れ、月経など、影響する可能性のあるものを書き加えてもらい、客観的にご自身の頭痛を観察してもらいます。
そうすることで、治療がやりやすくなります。
よかったら試してみてください。
8月の猛暑時に多くみられる症状
8月の猛暑の中では、熱中症、夏バテ、冷飲食による胃腸の不調、外の気温と冷房が効いた中での寒暖差、室内の温度調整に困っていらっしゃった方が多い印象です。

まず、湿度が高く、気温が比較的落ち着いていた梅雨時から一転して、暑くなってからすぐは、便秘になったという方が増えたように思います。
「汗をかくようになり、その分に見合った水分量が取れていなかった」のか、「体があまりの暑さに緊急事態と考えて、便の中の水分を少しでも多く腸で再吸収した」のか、便が硬くなって出にくくなるような便秘の印象です。
人間の体の適応能力がすごいのか、飲む水分量を調節されたのか、皆さん一時的で次第に慣れて1-2週間で便通は元に戻ったとおっしゃる方が多かったです。
東洋医学では、胃腸の働きはとても大切にします。
胃腸は冷たいものを苦手とするので、冷飲食は日常的に避けてもらうことが多いのですが、こう猛暑日が続くとそうも言ってられなくなり、ついつい飲んでしまいます。
その結果、胃腸が冷えて下痢する方、胃腸の動きが低下して、食欲が低下する方が出てきます。
ご本人も、冷たいもので胃腸が冷えてしまったという自覚があるようで、「理由はわかっています」とおっしゃることが多いです。
冷飲食をしがちな方で、胃腸の調子が悪く下痢をしやすい方は、冷たいものを避けてお腹を温めるようにするだけでも違うかもしれません。
また、部屋の中の冷房での気温と、外で猛暑の気温との差で、辛かった方や、寝室の温度調整に困っていらっしゃる方も多かったです。
寝ている間に冷房で冷えて、足がつってしまったり、「冷房を入れると寒くて、切ると暑くて眠れない」と眠りが浅くなったり、冷房で明け方にのどがイガイガしたりという声を多く聞きました。
私は今年は、寝室に冷房をつけると寒すぎて眠れなかったので、隣の部屋の冷房を28℃設定で微弱で入れておき、間接的に涼しくなるようにすることで、暑すぎず、寒すぎず快適に眠ることができました。
昨年はもったいないのですが、冷房を28℃に設定し、毛布をかぶって寝ていました。
私はどちらかというと今年のスタイルの方が快適に眠れていると思います。
夏も色々なシーンで漢方薬は活躍してくれます。
水分量が不足しやすく、夏バテ気味の方に処方する薬や、食欲低下の方、消化不良や下痢の方、クーラーで冷えてしまう方、この時期咳をしにくいので、咳を抑えたい方、など様々な症状に対して漢方薬を処方しました。
職場での冷房に対して、夏ですが体を温める薬も活躍します。
季節ごとに、東洋医学はバラエティに富んだ対応策があり、心強いなぁと思います。
新型コロナウイルス感染症の影響
今年は梅雨が長かっただけでなく、「新型コロナウイルス感染症」の影響もあり、いつもと違った夏になりました。
患者さんの反応は本当に100人いれば100通りの反応があり、ここまで個性が出るとは思っていなかったので、正直驚きました。
「在宅ワークが増えて、かえって健康になった」
「通勤がないと全く動かなくなりとても太ってしまった」
「自宅で1人での作業で孤独感を感じてコミュニケーションの大切さを痛感した」
「飲み会がなくなって嬉しい」
「持病の症状が大変すぎて、正直新型コロナウイルスどころではない」
「新型コロナウイルスを怖がりすぎて、動かず食べていたら持病の糖尿病の値が悪くなってしまった」
「通勤ストレスがなくなり、薬が要らなくなった」
などなど、挙げていくとキリがないくらい多くのお話を聞きました。
全ての反応に対して、自分が同じ方法を取るわけではありませんが、どの答えに対してもまずは共感することはできました。
今は、1人1人がもつ意見、全てが正解であり、間違いなどはないんだと思います。
これぞ正解!!という答えが存在しない中で、自分の考えをもって行動することがより求められますが、他の人に対しては自分の考えを押しつけずに、「その人自身の考え方を持っているのだ」と尊重してあげる、そして他者に対する思いやりをもって行動することを大切にすれば、より良い生活が送れるのではないかと思っています。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
早いもので、本日から9月ですね。今年もあと4ヶ月で、もう3分の2が終わったと思うとあっという間です。
2020年はこれまでとあらゆる体感が違うので、不思議な感じです。
そして、今度は夏から秋へ季節の変わり目となります。
猛暑で疲れている体、中でも胃腸を労ってあげつつ、秋分に向けてしっかり充電して2020年なりの秋を元気に楽しく過ごせたら良いなぁと思います。
次回もぜひご覧ください。よろしくお願いします。
にほんブログ村に登録しています。ランキング形式になっています。
多くの方に読んでいただけたら嬉しいので、
もしよければ、この下のバナーをクリックお願いします!
(クリックすると、にほんブログ村のサイトへアクセスします。)
にほんブログ村
